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ひろせ動物病院コラム

猫ちゃんも病院へ!ストレスの少ない通院方法を知ろう!

ここ数十年で猫ちゃんの存在は私たちにとても身近になりました。以前は屋外で生活し、ゴハンだけ貰いにくる猫ちゃんは、病気に気づかれることの方が少なかったと言えます。次第に室内で生活するようになった彼らは、病気の治療のために動物病院を訪れることも増え、最近では病気を早期発見・予防するという目的で来院されるようになりました。
「居候」ポジションだった猫ちゃんは、「家族」「パートナー」という立ち位置に代わり、彼らと私たちの距離は近くなってきています。

そんな猫ちゃんですが、ワンちゃんに比べると動物病院に来ることにストレスを感じやすい動物です。猫ちゃんはワンちゃんのように散歩に行かず、「単独縄張り性」の動物です。自分の縄張りから出ること、他の猫と行動範囲が被ることに、とても敏感です。猫ちゃんの飼い主様は、猫ちゃんをとても大切にされていますが、動物病院で怯える猫ちゃんを見て「病気でもないのに怖い思いをさせるのは可哀想」と思いがちです。しかし、健康チェックに対して消極的なわけではないはずです。ここでは、少しでもストレスを感じにくい方法についてご説明します。

キャリーの準備

まず、推奨したいキャリーですが、「ハードキャリー」で「上にもドアが付いているもの」、「上下が分解できるもの」がお勧めです。キャリーは動物病院への移動だけでなく、災害時の避難などにも使用します。物がぶつかっても壊れない形が良いです。また、怖がる猫ちゃんを診察台で「奥から引っ張り出す」のは、少しストレスがかかります。無理やり出そうとすると、キャリーの端に爪や脚を引っかけてケガをするリスクもあります。入口以外にも上にドアが付いていたり、キャリーが上下で分解できたりすると、比較的優しく出てきてもらうことが出来ます。

*おすすめはリッチェル製の【キャンピングキャリーファイン ダブルドア】です。

キャリーに入る練習(キャリートレーニング)

キャリーが「病院に行く時だけ出現する謎のボックス」になってしまうと、見ただけで逃げる猫ちゃんの出来上がりです。キャリーは普段から出しておくこと、使っておくことが大切です。
キャリートレーニングは、簡単です。「一日一回、キャリーの中で好物を食べること」を習慣づけてください。見ている前で食べてくれなくても大丈夫です(じっと見ていない方がいいです!)。一日一回、キャリーの一番奥に好物を「お供え」してください。
出入りする習慣を付けておくこと、そこで好物をもらえるという良いことがあることを知っていれば、そのうちの一回が「たまたま病院行き」でも、ストレスは少なくて済みます。もちろん、病院行きの次の日は警戒します。キャリーに入らない時は、好物を手前において食べさせるところからスタートし、徐々に奥へ進めていってください。

匂いの付いたタオルを用意する

猫ちゃんは「匂い」でコミュニケーションをとる動物です。そういった意味で、動物病院は色々な動物の「警戒フェロモン」でいっぱいです。少しでも安心感を得るために、「テリトリーの匂いを持参する」ことをお勧めします。
普段から使用しているタオルを「洗わずに」持参してください。一枚はキャリーの中に、一枚はキャリーに目隠しとして被せておくのが良いです。猫ちゃんは見られること、のぞき込まれることを嫌いますが、自分から観察することは行いたがります。キャリーは出来るだけ足元より上の位置に置き、中から観察できるよう少しだけタオルに隙間を作っておいてあげると良いです。

タオルに包まれる練習をしておく

動物病院ではバスタオルを使用することがよくあります。猫ちゃんの関節に負担をかけないように支える、診察台からの飛び降りを防止する、目隠しをする、などの目的があります。このタオルを持参した「匂いつき」のものにすると、テリトリーの馴染んだ匂いに安心しやすく、診察台の消毒薬など「好まない匂い」を体に付けずに済むというメリットがあります。家でタオルに包まれる練習をしておくと、「初対面の人にテリトリーの外で、いきなりバスタオルを被せられる」を初体験しなくて済みます。最初は短時間から体をタオルで覆い、すぐに開放する、という練習としてください。嫌がるようなら、解放し次第すぐにオヤツを提供してください。

「ラッピング効果」といわれますが、タイトな方が安心感を得られやすいようです。セーターの裾に無理やり首を突っ込む猫ちゃんを見たことがありませんか?狭いところ、体にフィットしている状態に、ハグをしてもらっているような安心感があるそうです。無理やりしなくても構いませんが、私たちがタオルでタイトに包むのは、こういった理由もあることを知っておいてください(虐めているわけではありません)。

PVPを利用する

Pre-Visit-Pharmaceuticalsの略で「来院時の不安を軽減する目的で投与する薬」という意味です。麻酔薬ではないので、完全に意識がなくなるわけではありません。病院に行く2-3時間前に、お薬を飲みます。投与のために少量のオヤツを利用することは許容されることが多いですが、処方した獣医師にご確認ください。私たちが人間ドックで内視鏡検査を受けるとき、辛くないように少量の鎮静剤を使いますよね?あれと同じと思ってください。
実際に効果の出かたには個体差があるようです。これはお酒に強い・弱いがあるのと同じで、適量を探るために何度が服用量を調整する必要はあります。よく効く体質であれば、ふらつきや眠気、唾液の分泌が増えるなどの様子が見られます。8時間程度でこれらの症状は解消されるため、ご安心ください。

フェロモン製剤は有効?

動物病院で勧められるものの中に「フェイシャルフェロモン製剤」があります。猫ちゃんはご機嫌な時、顔回りをスリスリしてくると思いますが、これはフェロモンを付けています。「私はいまハッピーです」という意味です。(飼い主様にスリスリするときは「ご機嫌です!大好き!」という愛情表現です。)このフェロモンは怖いときや、緊張しているときには分泌されません。病院のフェロモン製剤はこのフェイシャルフェロモンを合成したものです。猫ちゃん用のフェロモンなので、人間や犬には感じ取るとこができません。
では、このフェロモン製剤は、通院に有効か?というところですが、答えは「猫ちゃんの性格による」です。使用する価値はあります。しかし、このフェロモンがもたらす安心効果は「肩をたたきながら『大丈夫よ!』と言っている程度」とされています。つまり、緊張でドキドキとしている程度ならこの『大丈夫!』が有効ですが、今にも殺されるかもしれないと思うほど恐怖を感じている状態なら、気休め程度です。
また、目に見えないものですが「効果が消えてしまう」時間があります。スプレータイプは4時間程度で、匂い付けし直してください。揮発性のため、アルコールが入っており、噴霧した直後は猫ちゃんにとってアルコール臭くて堪りません!十分に揮発してから、猫ちゃんに添えてください。キャリーやタオルに噴霧しておくのがお勧めです。

*日本で入手できるフェロモン製剤はセバ・ジャパン(株)のフェリウェイです。
(ワンちゃん用にはアダプティル®という製品があります。)

さいごに、大切な家族なので、分かるものなら病気は早期発見・治療して、少しでも長く一緒にいたいものだと思います。しかし、言葉で説明して理解を得ることが難しい動物です。治療に関することや、飼い主様のお気持ちはしっかり話して家族で決めていきましょう。まずご不安な点がある場合は、ご相談に来院してもらっても大丈夫です。

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