昨日書いたコラムの続きです。
多くの飼い主様は次のようなことを悩まれます。
☑いつから予防薬を飲ませればいいのか?
☑いつまで予防薬を飲ませればいいのか?
☑居住地域の具体的な投薬時期はいつからいつまで?
いつからいつまで予防薬を飲ませればいい?
蚊が出現してから1カ月以内~蚊が一匹も見られなくなった次の月まで。というのが結論です。わかりにくいですよね。
居住地域によって、気温、地形、湿地、雨量などが異なるため、蚊の出現期間は変わってきます。
そのため、フィラリア予防期間も地域によって、変わってくることになります。
このようにフィラリア予防期間は、地域によって蚊の出現時期が異なるため、フィラリア予防薬を「〇〇月から開始し、〇〇月で終了」という日付による明確な基準はありません。
これが飼い主さんの混乱を招いてしまいます。
なので基本的には、
「蚊が1匹でも出始めた月から1か月以内 ~ 蚊が1匹も見られなくなった月の次の月まで」
がフィラリア予防期間とされています。重要なキーワードとしては「1匹でも」です。
例えば、蚊が出現していた期間が4月上旬~11月下旬の場合、
フィラリア予防期間は、5月上旬~12月下旬となります。
すなわち、5月の初めまでには予防薬の投与を開始し、12月終わり頃が最終の投薬となります。
飼い主さんの中には、自己判断で、フィラリア予防薬の投与開始を遅らせたり、投与終了を早めたりする方がいますが、フィラリア症になるリスクが高くなりますので、必ず獣医師に相談の上、判断してください。(大事なことなので赤字)
また、フィラリア予防は、0点か100点の予防です。
フィラリア予防期間中、毎年、毎月1回、漏れなく予防薬の投与を行った場合は、その予防は100点です。
しかし、予防期間中、1回でも予防薬の投与を忘れた場合、
投薬の忘れた月に感染してしまっている可能性があるので、その予防は0点となります。
また、何年もの間、予防薬の投与を欠かさず行い、今までは予防が100点であっても、1回投与を忘れたせいで、今までのフィラリア予防は0点になってしまいます。
したがって、決められた予防期間のフィラリア予防薬の投与は厳守するようにしてください。
予防期間に関して、これだけ厳しく言うのは、とても重要なことだからです。
イマイチよく理解できない場合は、
居住地域の都道府県別にフィラリア予防期間の目安がHDU算出というもので定められていますので参考にしてください。
大阪府だと、5月~12月までという感じです。
注意点としては、気温や雨量などの微妙な変化、異常気象、生活環境の変化などによって、蚊の生存期間や繁殖に変化が起こる場合もありますので、HDUで算出したフィラリア予防期間はあくまで目安であるということです。(大事なことなので赤字)
よって、
飼い主さんは、下記のような不測の事態も考慮し、予防を行うように心がけてください。
蚊の生存期間延長、異常繁殖の環境要因として、
*家に庭がある、または周りに草むらがある。
*草木の多い公園や河川敷を散歩する。
*異常気象で豪雨やヒートアイランド現象が起こる。
などが挙げられます。
何故「蚊が1匹でも出始めた月から1か月以内 ~ 蚊が1匹も見られなくなった月の次の月まで」
まず、フィラリア予防薬の「実は…」の話をします。
犬のフィラリア予防薬は、「予防」とついていますが、実は駆虫薬で、
犬の体内にすでに寄生しているフィラリアの子虫を駆除します。
つまり、この薬剤は、犬の体内には寄生しているが、まだ心臓内には侵入していない皮下や筋肉等にいるフィラリアの子虫を駆除するものです。
しかし、この薬剤は、皮下や筋肉等のフィラリア子虫に対しては駆除効果を発揮することができますが、心臓内に侵入し、成長してしまったフィラリア成虫には、発揮することはできません。
フィラリアは、蚊の体内にいるフィラリア子虫が、蚊が吸血する際に犬の体内に移行します。
犬の体内に入ったフィラリア子虫は脱皮を繰り返して成長し、最終の寄生場所である心臓にたどり着き、そこで成虫になります。
そして、心臓内の寄生しているフィラリア成虫が多くなると、症状が発現するようになってきます。
これを「フィラリア症」と言います。
この症状が発現する状態を抑制できれば、フィラリア症を予防できるということになります。
つまり、心臓内に侵入する前に、フィラリア子虫を駆除することが予防につながるということです。
このように、「駆虫」が「予防」として作用するところから、フィラリア駆虫薬ではなくフィラリア予防薬と一般的には呼ばれています。
前述を踏まえたうえで、蚊に刺され、フィラリア子虫が犬の体内にしてから、心臓内に侵入するまで最短で50日と言われています。
その間に、フィラリア子虫を駆除する必要があります。
すなわち、「蚊の出現」を「蚊に刺される」と考えると、蚊の出現から50日以内に1回目のフィラリア予防薬を投与しなければなりません。安心を考慮して30日、つまり1か月以内に予防薬をすればベストな予防ができるということになります。
このようなことから、
「蚊が1匹でも出始めた月から1か月以内 ~ 蚊が1匹も見られなくなった月の次の月まで」
が予防期間とされています。
また、予防開始も重要ですが、予防終了の最後の投薬はもっと大切です。
なぜなら、予防終了時期は少し肌寒くなってきている時期ですので、飼い主さんが肌感覚で寒くなったから、蚊はもういないと自己判断して、早めに予防薬の投与を止めてしまいがちだからです。
フィラリア予防薬の投与は、蚊が1匹でもいなくなったことを確認し、その1か月後までは、続けるようにしてください。
もし、蚊がいるのに、予防薬の開始が遅れた場合や早く終了してしまった場合、あるいは途中で飲ませるのを忘れた場合などは、フィラリア症の罹患リスクが高くなりますので、注意してください。
フィラリア検査
フィラリア予防薬を投与する前には、必ずフィラリア検査を行い、現時点、フィラリアに感染していないことを確認する必要があります。
また、フィラリア予防期間中に、予防薬の投与忘れや、投与期間・間隔を厳守できなかった場合にも、フィラリア検査を行う必要があります。
なぜなら、フィラリアに感染している状態で、フィラリア予防薬を投与すると重大な副作用が起こることがあるからです。
その副作用は、フィラリア成虫により産出されるフィラリア子虫をフィラリア予防薬で一度に大量駆除する結果、生じます。
*駆除により死滅したフィラリア子虫に対して、体が異物反応を引き起こし、ショック症状が現れます。
*駆除により死滅したフィラリア子虫の死骸が肺や臓器の毛細血管に詰まって、臓器障害を起こします。
フィラリア予防薬
フィラリア予防薬は、1か月に1回の投与でフィラリア感染を予防できる薬です。
ひと昔前までは、予防期間中、毎日投与でしたから、その時に比べると予防がしやすくなり、その結果、フィラリアの感染率も低下してきました。
しかし、ゼロではありません。
フィラリア予防薬の通年投与
飼い主様の中には、
予防期間が分からず、中途半端な予防をしてしまって、愛犬が感染してしまうケースもあります。
近年の温暖化や異常気象により、蚊の生息地拡大や生存期間延長の傾向があるため、
「いつから予防を開始したら?」、
「いつ終わったらいいか?」などの
不安を抱えてしまう飼い主さんには、フィラリア予防をより確実に行うためにも、「通年予防」をお勧めします。
1年を通して暖かい沖縄県では、通年予防は一般的です。
また、アメリカの犬のフィラリア症ガイドラインでは、フィラリア予防をより完璧に近づけるため、通年予防を推奨しており、これを受けて日本でも通年予防を行う動物病院が増加傾向にあります。
・通年予防の方法
*フィラリア予防の内用薬を1年通して、毎月1回忘れずに投与する。
*フィラリア予防の注射薬を1年に1回忘れずに接種する。
・通年予防の利点
*フィラリア予防がより確実になる。
*予防期間を考えなくていい。
・通年予防の欠点
*フィラリア予防薬の購入費用がかかる。
飼い主さんは、利点である「確実予防」、欠点である「コスト」の両方を考慮した上で、判断し行ってください。
一番の目的は、愛犬をフィラリア症から確実に守ることです。
フィラリア予防の注射薬に関しては、
1年に1回の注射で、効果は約12か月間持続しますので、
内用薬を飲めない、投薬が難しい、薬を投与すると嘔吐や下痢をする、投薬を忘れる、投薬が邪魔くさいという場合は、お勧めしますが、
日本では、副作用や他の薬との飲み合わせなどの問題から、まだ主力ではありません。
そのため、利便性より安全性を重視して、通年予防をする場合、内用薬タイプの予防薬をお勧めします。
間違っている情報には、惑わされないように!
多いのが、「屋内で飼っていれば、フィラリア予防はしなくていい」といったものです。
室内、100歩譲って高層階の屋内でも、蚊はいます。
なぜなら、人の衣服や持ち物などで人が運んでくるからです。
さらに、蚊はちょっとした網戸の隙間からも侵入してきます。
このように、屋内への蚊の侵入を完璧に防げる生活環境を作るのは至難の業です。
ここまでは、100%屋内で飼育している場合のことですが、
屋外へ散歩に連れて行く屋内飼育の場合は、ほぼ散歩時に蚊に刺されています。
フィラリア感染犬のうち、屋内飼育の割合が3.1%、屋外飼育の割合が96.8%という報告があります。
この結果からみても、屋内飼育でも感染することはゼロではないことが分かります。
つまり、屋内、屋外であろうが犬を飼育している限り、フィラリア予防は行うということは、愛情の一つと思われます。
予防していない犬のフィラリア感染率は?
予防せず1年を経過した場合は38%、
予防せず2年を経過した場合は89%、
予防せず3年を経過した場合は92%
であるという報告があります。
この結果から、予防をしないでいると、年月が経過すればするほど、フィラリア感染率も上昇していきます。
つまり、犬の小さな心臓内がフィラリアの寄生数増加により、フィラリア満員状態になっていくということです。
まず、ここまでくると、重篤な症状を示し、命に関わる危険な状態になっているはずです。
最後に
フィラリア症がどれだけ怖い病気か、伝わりましたでしょうか。
前述の通り、幸いにもフィラリア症は予防が可能です。
このコラムにより、飼い主さんが、フィラリア予防について理解を深め、より確実に愛犬がフィラリア感染から守られる一助になれば幸いです
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